
2026年8月8日(土)、文部科学省後援「令和8年度 学修デザイン研究会全国大会」(主催:NPO法人学修デザイナー協会/東京・亀戸文化センター)に、弊社CEOの小仁聡が招聘講演の講師としてお招きいただきました。
オープニングに神田昌典氏(アルマクリエイション代表取締役)、招聘講演に中山芳一氏(IPU環太平洋大学特命教授)が並ぶプログラムの中で、全国から集まった学校の先生方に向けて45分を担当しています。企業の人材育成を本業とする立場から、学校教育の場に招かれたかたちです。
以下、当日お話しした内容の要点をまとめます。企業で「自律型人材を育てたい」という課題をお持ちの方にも、そのまま重なる内容です。
| 大会名 | 文部科学省後援 令和8年度 学修デザイン研究会全国大会(主催:NPO法人学修デザイナー協会) |
| 日程・会場 | 2026年8月8日(土)/亀戸文化センター(東京都江東区)・ハイブリッド配信 |
| 担当 | 招聘講演 11:15〜12:00(45分・ワークショップ形式) |
| テーマ | 経験を学びに変える「リフレクション」〜産業界でも学校でも、「AIに教える」学び方〜 |
| 登壇者 | 小仁聡(Learning Shift CEO/一般社団法人21世紀学び研究所 理事) |
1.「振り返り」は、感想でも反省でもない
学校でも企業でも「振り返り」という言葉は日常的に使われています。ただ、その中身は「楽しかった」「次は気をつけます」に寄りやすい。
リフレクションは、そのどちらでもありません。経験を客観的かつ批判的に問い直し、自分でも気づいていなかった学びを自分で取り出す技術です。反省が「結果」に価値を置くのに対し、リフレクションは経験そのものに価値を置きます。
なお「批判的」は critical の訳で、自分を否定することではありません。当たり前を疑う、という意味です。ここが伝わらないと、リフレクションの時間が自己反省の時間に変わってしまいます。
2. 前例のない時代の学び方 ── PDCAからAARへ
計画が立てられるのは、先が読める時代の話です。前例のない環境では、動きながら学ぶしかありません。OECDが示す AAR(Anticipation-Action-Reflection) モデルでは、サイクルの3分の1をリフレクションが占めています。付け足しではなく、構成要素として置かれている。
企業がいま育てたいと言う「自律型人材」も、突き詰めれば自分の経験から自分で学べる人のことです。学校の探究学習と企業の人材育成は、この一点で完全に重なります。産業界と学校で、私たちは同じことをやっている。また本来はそこがつながっていないといけない。
3.「認知の4点セット」を、その場で使っていただいた

全体のうち15分は、先生方ご自身に手を動かしていただく時間にしました。使ったのは 「認知の4点セット」(意見・経験・感情・価値観)。一般社団法人21世紀学び研究所の熊平美香が整理し、経済産業省の社会人基礎力にも採り入れられているフレームです。
進め方はシンプルです。
- まず、その日の講演を聴いての感想を一行書く
- その一行を「意見」の欄に移し、残る「経験・感情・価値観」を埋める
- ペアで読み上げ合う(このときアドバイスは禁止。質問だけ)
- 「最初の一行と、いま埋めた4つの欄」を比較する
認定の4点セットで整理することで、単なる感想がなぜそのような感想を持つにいたったかとの自身の捉え方がが客観視できるだけでなく、同じ内容を聞いても学び・気づきは人それぞれであることを体験として持ち帰っていただきました。
またそのような中、当日、最も反応をいただいたのは「経験は、そのまま何もしないと流れていく。」という一行に対してでした。
4. 企業と学校、両方の現場から
企業研修での実践と、学校・大学での実践(産学官連携の探究プログラム、高校の文化祭・生徒会)の双方を事例としてご紹介しました。
大学生の探究プログラムでは、提案プレゼンで終わらせず、その後ろに認知の4点セットの時間を置きました。そこで出てきたのが「働くことは、誰かの困り事を解決することだと分かった」という言葉です。プレゼンをした時点では、まだ出てこなかった言葉でした。
高校生に対しても、同じ型で同じ深さまで到達します。世代や属性より、型を持っていることと繰り返すことのほうが効くというのが、現場から得ている実感です。
5. AIには「弟子」の役を振る ── Teach to AI
最後のセッションでは、リフレクションとAIテクノロジーの付き合い方について紹介しました。
AIが学びにもたらした変化は、効率化ではなく構造の変化だと考えています。知識を入れて理解して応用する直線から、問いを投げて返ってきたものを組み直す循環へ。この循環を回しているあいだ、ずっと働いているのがリフレクションです。
AIの使い方は3ステップで整理してお伝えしました。Learn from AI(先生)/Practice with AI(コーチ)/Teach to AI(弟子)。3つとも必要で、変わるのはAIに振る役のほうです。そして3つ目は、まだあまり使われていません。
AIに分かるように説明しようとすると、自分の理解の穴が見つかる(プロテジェ効果)。AIを「弟子」に置けば、人が伴走してやってきた4つの問いかけを、AIに代わりにやらせられます。
このとき要になるのが、プロンプトの最後の一行です。
「アドバイスはしないでください。」
AIは放っておくと助言を始めます。よかれと思って。ただ、助言が来た時点で、リフレクションは本人の手から離れてしまう。ペアワークで聴き手にお願いしたことを、そのままAIにもお願いする。AIから答えを引き算すると、学びは本人のほうに残ります。
6. 結局、問いの質が学びの質になる
締めくくりにお伝えしたのは、次の一点です。
AIをどう使うかではなく、どんな問いを向けるか。AIは、良い問いには良いものを返し、雑な問いには雑なものを返す。これは生徒も、私たち大人も同じです。
それらしい答えなら、いまはAIが出してくれます。ただ、自分の中の答えは、一度立ち止まって自分を客観的かつ批判的に振り返らないと出てこない。そこは、まだ人間の側に残っています。
導入のしかたも具体的にお渡ししました。カリキュラムや研修体系を組み替える必要はありません。探究の発表のあと、行事のあと、面談の前——終わりに5分足すだけです。
土曜日の朝から一日、あの熱量で学び続ける先生方に、こちらが学ばせていただきました。貴重な機会をいただいた皆さまに、あらためて御礼申し上げます。
ご相談いただけること
Learning Shift は、企業の人材育成と学校教育の双方で、「経験を学びに変える」学習デザインをご支援しています。
企業・団体の皆さまへ 研修へのリフレクション導入(研修転移・効果測定まで含めた設計)/「自律型人材の育成」を精神論ではなく型と仕組みに落とす設計支援/生成AIを前提とした学び方(Learn from AI・Practice with AI・Teach to AI)の社内展開/講演・セッション
学校・教育委員会の皆さまへ 探究学習・キャリア教育へのリフレクション導入と教員研修/認知の4点セットを使ったワークショップ(45分版・90分版)/生成AIを教室でどう扱うかの線引き
まだ企画が固まっていない段階、「自社(自校)の場合どう入れられるか聞いてみたい」という段階でも構いません。現状をお聞きしたうえで、必要な範囲をご提案します。