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2026.02.05

HRの大再発明が始まった:AIが拓く「全領域統合型(フルスタック)人事」への道

記事 / 写真 / 画像:LEARNING SHIFT INC.
HRの大再発明が始まった:AIが拓く「全領域統合型(フルスタック)人事」への道
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人事(HR)という職能は、長年「二つの顔」の間で葛藤してきました。一つは、人の成長を支援し組織を勝たせる「戦略的パートナー」。もう一つは、ルールや規制を遵守させ、ミスのない運用を徹底する「管理・規制の番人(事務のポリス)」としての顔です。
今日紹介する記事によれば、生成AIの急速な進化によって、この歴史的な二律背反がついに解消され、HRは「大再発明」の時代に突入します(この記事は、世界的な人事アナリストJosh Bersin氏によるものです)。
1. 新パラダイム:個人の効率か、組織のスケールか

まず、私たちがAIをどう捉えるべきか、その前提を疑う必要があります。
Bersin氏は、AIの目的を「個人の生産性(Personal Productivity)」を上げることだけに留めるのは、AIの真の価値を見誤っていると言及しています。

(図2:AI AssistantからAutonomy(自律)への進化。出典:Josh Bersin / 日本語訳:小仁 聡)

これまでのAI活用は、情報の検索や資料作成の補助など、「個人の加速装置」として捉えられがちでした。しかし、組織としての真の変革は、図の右側にある「エンタープライズ・パフォーマンス(組織全体のパフォーマンス)」にあります。
AIは個人のタスクを助けるだけのものではなく、「ビジネスプロセスそのものにスケール、品質、知能を埋め込むもの」なのです。業務フローの中に複数のAIエージェントを組み込み、仕事のシステム構造そのものを全く別次元のものへと作り替える。この「仕組みの再定義」こそが、これからの人事に求められる役割です。

2. HR再発明の4つのステージ:アシスタントから「自律型組織」へ

組織はどのようにAIを実装していくべきでしょうか。Bersin氏は4つの成熟度ステージを提唱しています。

(図2:AI AssistantからAutonomy(自律)への進化。出典:Josh Bersin / 日本語訳:小仁 聡))

ステージ1:AI Assistant(支援)
現在の仕事を効率化する段階。15-30%の改善。
ステージ2:AI Agent(自動化)
ジョブ(役割)を再設計し、不要なプロセスを排除する段階。30-50%の改善。
ステージ3:AI SuperAgent(多機能化エージェント)
複数のエージェントを連携させ、業務プロセス全体を再構築(リエンジニアリング)する。100-200%の改善。
ステージ4:Autonomy(自律型AI時代)
AIエージェントが自ら判断・実行し、人間は「エージェントの指揮・監督」に専念する。300%以上の劇的な改善。

バーシン氏の調査では、人事の仕事の30-40%は比較的容易に自動化可能だといいます。しかし、これは「人事の役割が縮小する」ことを意味しません。人事は「事務作業」という重りから解放され、より高度で広範な戦略を担うフルスタック(戦略から実務までを一貫してデザインする全領域統合型)人事」へと進化するのです。

3. 学習デザイナーとしての視点:仕組みと構造をデザインする

この記事を学習デザイナーの視点で切り取ると、非常に重要な気づきが得られます。
これまでの人材開発は、現場の個々人のスキルアップを支援することに主眼が置かれてきました。しかしAIによって業務フローそのものが変わる中、これからは「どのような学習生態系(ラーニング・エコシステム)を構築し、組織のパフォーマンスを最大化するか」という、仕組みそのもののデザインが求められています。
AIエージェントをどう指揮し、どのようなデータを流し込み、現場の意思決定をどう最適化するか。それは、インストラクショナルデザインの知見を「個人の学び」から「組織のプロセス設計」へと応用していく過程でもあります。
これまで「管理・規制の番人(事務のポリス)」として費やしていたエネルギーを、組織全体のパフォーマンスを底上げする「AIオーケストレーション(AIの建築と指揮)」へと転換する時が来ているのです。

4. 最後に

HRの再発明は、すでに始まっています。
AIは単なる「便利ツール」ではありません。それは、私たちが組織のあり方そのものを描き直すための「設計図」です。
最後に、この問いを残したいと思います。
「あなたの組織のAI活用は、今の不便を『便利』にするだけですか? それとも、ビジネスの『構造』そのものを変えるものですか?」
未来の組織をデザインするのは、他ならぬ私たち人事のプロフェッショナルです。

元の記事:The Great Reinvention of Human Resources Has Begun

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今後のアクションへのヒント
AIによって事務作業が消えたとき、あなたに残される「人間ならではの価値」は何ですか?
まずは、自社の業務を「個人の効率」ではなく「プロセスの自動運転」という視点で見つめ直してみましょう。

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