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2022.02.10

コンテンツ・ナレッジの要!良質のコンテンツ作りに不可欠な「マイクロラーニング」とは

記事 :LEARNING SHIFT INC.
コンテンツ・ナレッジの要!良質のコンテンツ作りに不可欠な「マイクロラーニング」とは
TPACKを構成する3要素の一つであるコンテンツ・ナレッジは、良質なコンテンツの作り方に関する知識です。

良質のコンテンツの作り方といっても、具体的に何をどのように作成するのかがよくわからない、という人も多いのではないでしょうか。コンテンツ・ナレッジについて理解するにはいくつかの切り口がありますが、その中でも重要なキーワードの一つが「マイクロラーニング」です。

人材開発の分野において世界的に知名度の高い組織「ATD(Association for Talent Development)」の会長を務めるトニー・ビンガムが、2017年に開催された国際会議で紹介して以来、「マイクロラーニング」は注目を集めるようになりました。

そのため、人材担当者なら一度は聞いたことのある言葉かもしれませんが、ここではコンテンツ・ナレッジの一つとして、マイクロラーニングの特徴や実践する際のポイントなどについてご紹介します。

1. マイクロラーニングは、今最もホットなコンテンツ・ナレッジの一つ

「マイクロラーニング」とは、小分け学習のことです。小分け学習というと、短い動画をイメージするかもしれませんが、必ずしも動画であるとは限りません。

ブレンディッド・ラーニングにおけるコンテンツとは、「成果を出すために必要な学習要素」のことで、主に以下のものを指します。

  • 動画
  • ファイル
  • 記事
  • 音声スライド
  • 図説

マイクロラーニングは、これらのコンテンツを5~10分ほどの小さなサイズにして組み合わせ、学習目的に合わせたコースを設計していきます。

なぜマイクロラーニングは、成果につながるコンテンツ作りに必要なのでしょうか。

その理由として、以下4つの学習を取り巻く変化が挙げられます。
#1. 従来の学習方法に限界を感じる企業が増えた
#2. 学習者のニーズが変化した
#3. コンテンツに対して即効性や効率化が教育担当者から求められるようになった
#4. テクノロジーの進化により学習環境が変化した

#1. 従来の学習方法に限界を感じる企業が増えた

従来の企業内学習は、オフィスのパソコンの前に座り、1時間ほどのコンテンツを視聴するというスタイルが主流でした。

しかし最近では、
「研修に費やす時間を割くことが難しい」
「研修が業務に直結しない・役に立たない」
といった、業務上の観点から研修に対する課題を抱える企業が増えてきました。

そこでこれらの問題を解決するため、学習時間をコンパクトにしたマイクロラーニングに期待が集まるようになったのです。

#2. 学習者のニーズが変化した

学習者のニーズは、「じっくり学びたい」から「手軽に学びたい」にシフトしています。
コンテンツが短く時間をかけずに学べるマイクロラーニングは、学習者のニーズにぴったりフィットします。

#3. コンテンツに対して即効性や効率化が教育担当者から求められるようになった

多くの教育担当者は、以下のような課題を抱えています。
・プログラムの経過年齢が早くなり、更新性を上げる必要がある
・コンテンツを即座に作り変える必要がある

コンテンツの長さが5分程度で、テーマごとに細かく分けられているマイクロラーニングには、こうしたニーズに対応できる柔軟性があります。

#4. テクノロジーの進化により学習環境が変化した

テクノロジーの進化により、スマートフォンやタブレット端末が広く普及しました。これらのデバイスを使うことによって、受講者はどこにいてもスキマ時間を使って学ぶことができます。

こうした学習環境の変化が、小分け学習を促進したと考えられます。

企業内学習には、さまざまな変化が訪れています。この変化にマイクロラーニングの特徴を照らし合わせてみると、ニーズが高まっているのもうなずけるでしょう。

2. マイクロラーニング実践のポイント

マイクロラーニングを実践する際、以下4つの点に留意します。

コンテンツ・ナレッジの要!良質のコンテンツ作りに不可欠な「マイクロラーニング」とは

各留意点について、それぞれ詳しく見てみましょう。

#1. テーマを最小単位まで細分化する

カリフォルニア大学サンタバーバラ校のリチャード・メイヤー教授と、オーストラリアのウーロンゴン大学のポール・チャンドラー教授が2001年に実施した共同研究によると、コンテンツをまとめて見て学習した人よりも、コンテンツを細分化して学習した人の方が、より深く理解できたということです。

マクロラーニングが目指しているゴールは、「学習者一人ひとりにあったラーニングを設計し、必要なタイミングで提供していく」こと。そのためには学習内容はできるだけ細分化されていて、テーマ別に明確に分かれている必要があるのです。

「細分化とはどの程度のサイズ?」と疑問を抱く人も少なくありませんが、分数ではなかなか表現しきれません。なぜなら、適切なコンテンツのサイズの基準は、「人の認知負荷を超えない程度のもの(コンテンツの伝えていることを、それほど努力しなくても理解できる程度のもの)」と、一定の数値として表すのが難しいからです。

認知負荷がかかりやすいコンテンツには、以下の特徴があります。
・アニメーションが多く入っているうえに音や文字数が多い
・学習者にとって詳しくない分野
・説明がやたらと長い

しかし、例えば、絵と文字のみを使ったコンテンツにして情報量を軽くしてあげると、10分程度までなら集中力を保つことが可能になります。つまり、同じ内容・時間(ただし、10分未満が理想)でも、負荷を取り除くことで適切に細分化されている、というわけです。

もう少し具体的に細分化されたコンテンツがイメージできるよう、プレゼンテーションの例を以下にご紹介しましょう。

コンテンツ・ナレッジの要!良質のコンテンツ作りに不可欠な「マイクロラーニング」とは

上の図の中にある【例】「営業力強化」を見ると、「ヒアリング」からさらに細かく項目が分かれています。これらについて5分以内で説明できるのが、細分化の目安です。

このように、細分化の程度を定量化することは難しいのですが、「私たちの認知に負荷を与えないくらいのサイズ感」まで小さくすることが、マイクロラーニングの設計におけるポイントと覚えておくとよいでしょう。

#2. 複数のチャンネルを使う

「複数のチャンネルを使う」というのは、「人の感覚のチャンネルに働きかける」ということを意味します。

私たちは、目で読むだけ、音で聞くだけよりも、両方のチャンネルを使った方が学習効果を得やすいといわれています。つまり、耳と目の両方を使った情報の伝達方法をコンテンツに取り入れていくことが、重要なポイントなのです。

マイクロラーニングにおいては、映像や音声、静止画、文章などを用いて、さまざまな感覚のチャンネルに働きかけられるようなコンテンツ作りを意識しましょう。

#3. パーソナライズされた内容と丁寧なガイドを提供する

マイクロラーニングでは、学習者の集中力を切らさないことに焦点を当てています。そこでポイントとなるのが、内容をパーソナライズ(個別化)しつつ、学習意欲を高める丁寧なガイドを加えることです。

具体的には、「あなたに向けたコンテンツですよ」というふうに、「あなた」という言葉を意識的に繰り返し入れていきます。これだけでも学習者は「これは自分にとってどんな意味があるのか」と、考えるようになります。

「丁寧なガイド」という点では、学習者が迷わないように、次に取り組むコンテンツに誘導するなどの工夫が挙げられます。

学習者は誰かを明確にし、それに合わせてカスタマイズされた丁寧なコンテンツを意識して作っていくということが、マイクロラーニングを設計するうえでは重要です。

#4. マイクロコンテンツとマイクロプラクティスを組み込む

おそらく、#1 ~ #4の中で最も留意すべきは、この「マイクロコンテンツとマイクロプラクティスを組み込む」でしょう。

残念ながら、現在のマイクロラーニングというと、マイクロコンテンツまたはマイクロ動画を指す場合がほとんどです。しかし、これはインプット中心で練習の要素がほとんどなく、本当の意味での「ラーニング」とはいい難いものがあります。

「ラーニング」は「新たに学ぶ」から「実際にできるようになる」までを含んでいます。そして、アウトプットはこの「実際にできるようになる」ための練習にあたります。

例えば、マイクロコンテンツで学んだ後、自分の意見を述べる、試験問題を解く、あるいはロールプレイしたものを動画で撮影して投稿するといったものが、アウトプットです。真の意味での「ラーニング」を実践するコンテンツをそろえることが、ブレンディッド・ラーニングに適切な学習環境を整えることにつながるのです。

3. ブレンディッド・ラーニングで組み合わせるコンテンツの種類

コンテンツ・ナレッジの要!良質のコンテンツ作りに不可欠な「マイクロラーニング」とは

ブレンディッド・ラーニングにおいてコンテンツをブレンドする際、各コンテンツを準備する必要があります。

前章でも説明したとおり、インプット+アウトプットは、「ラーニング」を実践するうえで不可欠な組み合わせです。そして、効果的な練習ができたかどうか評価するアセスメントコンテンツも、同じように重要なのです。

例えば、3種類のコンテンツを取り入れた研修では
①5分程度の動画を使って新たなノウハウや知識を学習者に教える(インプット)
②学習者にテーマに関するファイルを提出してもらう(アウトプット)
③提出したファイルについて、お互いコメントをフィードバックし合う(アウトプット)
④記述試験を実施し、学習者の理解度を評価する(エバリュエーション)
という学習の流れで進められます。

インプット・アウトプット・エバリュエーションのうち、一つ欠けても効果的な学びとしては不十分です。

研修を設計する際は、学習内容がこれらの種類を満たしているかどうか、チェックリストとして使うとよいでしょう。

4. まとめ:マイクロラーニングでニーズにフィットした研修設計を!

コンテンツ・ナレッジのキーワードの一つである「マイクロラーニング」についてご紹介しました。

企業内学習の現場では、業務上・学習者・教育担当者・学習環境の観点から、それぞれ変化が起きています。短時間で役に立つ学びが求められているわけですが、そうしたニーズに対応しているのがマイクロラーニングです。

本記事ではまた、マイクロラーニングを実践するうえで必要な、以下4つのポイントもご紹介しました。
①テーマを最小単位まで細分化する
②複数のチャンネルを使う
③パーソナライズされた内容と丁寧なガイドを提供する
④マイクロコンテンツとマイクロプラクティスを組み込む

ブレンディッド・ラーニングにおいて、学習コンテンツをブレンドする際、インプットの従来型学習だけでなく、アウトプットコンテンツとアセスメントコンテンツも組み合わせることが重要です。マイクロラーニングを取り入れて、ニーズにあった研修を柔軟にデザインしましょう。
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