
「今回のプロジェクト、何が悪かったのか反省会をしよう」
人材開発の現場でも、マネジメントの最前線でも、私たちは「経験から学ぶ」ことの大切さを疑いません。しかし、多くの現場で「振り返り」が形骸化し、本当の意味での成長や成果に繋がっていないという違和感を感じることはありませんか?
なぜ、一生懸命にリフレクション(内省)をしているはずなのに、同じ場所をぐるぐると回っているような感覚に陥ってしまうのか。それは、私たちが無意識に「4つの落とし穴」にハマり、リフレクションという名の「過去の言い訳」をしてしまっているからです。
今回は、多くの実践者が陥りがちな「経験学習の罠」を解き明かし、自分自身のOS(思考の前提)を書き換えて、ありたい未来を創り出すための「真のリフレクション」についてお話しします。
1. そのリフレクション、チェックがつきますか?——4つの落とし穴と真実の対比
まず、私たちが依って立つべき「経験学習サイクル(デービッド・コルブ)」を再確認しましょう。

自律型人材は、現状とありたい姿のギャップを埋めるために、このサイクルを回して自ら学び成長します。しかし、このサイクルを回そうとする時、私たちは無意識に以下の4つの落とし穴にハマってしまいます。
【視点の罠1】「事象の分析」か、それとも「ゴールへの逆算」か
トラブルやミスが起きたとき、私たちは「何が起きたか」「なぜ起きたか」という原因分析に没頭します。分析は大切ですが、目的地が不在の分析は迷子を生むだけです。
・課題(罠):起きた事象(トラブルやミス)だけを見て、分析したつもりになる。
・本当の経験学習:常に「ゴールに近づくために、何ができて、何が未達か」を言語化する。
ゴールという目的地を基準にしなければ、今の位置が「順調」なのか「迷子」なのかさえ分かりません。未達を直視し、ゴールへ向かうための距離を測り続けること。これを怠ると、私たちは永遠に目的地に辿り着くことはできません。
【視点の罠2】「反省会」か、それとも「未来創造」か
私たちは子供の頃から「反省しなさい」と言われて育ちました。しかし、ビジネスにおけるリフレクションと、単なる「反省会」は全く別物です。

・課題(罠):変えられない過去の間違いを、責任追及や謝罪のエネルギーで消費する。
・本当の経験学習:過去の経験を材料に、「よい未来」を創るためのリサーチを行う。
反省会は「過去」への謝罪ですが、リフレクションは「未来」への投資です。起きてしまったことは変えられません。でも、その経験をどう解釈し、次の1秒をどう創り変えるかは自分次第。リフレクションは、未来を創造する知的な活動なのです。
【視点の罠3】「行動の微調整」か、それとも「OSの書き換え」か
「次はこう動きます」という行動レベルの改善。これだけでは、本当の意味での自己変容は起きません。なぜなら、人間の行動を支配しているのは、その奥底にある「思考の前提(OS)」だからです。
・課題(罠):「やり方」だけを変えて、自分の「あり方(前提)」を疑わない。
・本当の経験学習:自分の成功体験を疑い、前提から書き換える「ダブルループ・ラーニング」。
私たちは成功体験を繰り返す動物です。「かつての成功法則」は、変化の激しい現代では「成長を阻む足かせ」になることがあります。事実や行動という目に見える部分だけでなく、その奥にある「なぜ私はそう考えたのか?」というOSにメスを入れる。この痛みと向き合うことが、本質的な変容の入り口です。
【視点の罠4】「機会の消失」か、それとも「知恵の転用」か
「今回は特殊なケースだったから、次は活かせないな」
そうやって学びを捨ててしまうのは、あまりにももったいないことです。
・課題(罠):同じような機会がないと判断し、学びを忘れてしまう。
・本当の経験学習:学びを細かく分解(マイクロ化)し、別の場面でも活かせる「工夫」を見出す。
完璧に同じ機会は二度と来ません。しかし、経験から抽出したエッセンスを「別の場面でどう活かせるか?」と工夫する力こそが、学習の転用(トランスファー)を可能にします。知恵を抽象化し、日常のあちこちに散りばめる。この「転用のしつこさ」が成長の差を生みます。
2. すべての鍵を握る「メタ認知」の力と「認知の4点セット」
これら4つの落とし穴を避け、自分をアップデートし続けるための唯一にして最強の鍵。それが「メタ認知」です。
メタ認知とは、いわば「自分を見つめる、もう一人の自分」を持つこと。しかし、「メタ認知をしよう」と思っても、具体的に何をすればいいのか戸惑う方も多いでしょう。
そこで私がおすすめしているのが、一般社団法人21世紀学び研究所の代表理事である熊平美香氏が提唱している「認知の4点セット」というフレームワークです。

1)意見(あなたの意見):何を感じ、どう考えたのか?
2)経験(その根拠となる経験):どんな経験がその意見を作ったのか?
3)感情(紐づく感情):その時、どんな気持ちだったのか?
4)価値観(大切にしていること):そこから見える、自分が大切にしている価値観は何か?
この4つを書き出すだけで、驚くほど簡単にメタ認知の質が高まります。特に「感情」と「価値観」に光を当てることで、自分がなぜその行動を選択したのかという「OS」が姿を現します。
このフレームワークについて詳しく学びたい方は、ぜひこちらの書籍を手に取ってみてください。リフレクションの本質を捉え、内省の技術を日常の習慣に変えるための、具体的なメソッドが詰まっています。
▶︎ 『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』(熊平美香 著)
3. 「感情」と向き合い、OSを書き換える勇気
ダブルループ・ラーニングによって自分のOSを書き換える。それは、今までの自分の一部を否定するような、苦しい作業かもしれません。

自己の行動を決めているのは、自己の内面(前提)です。ここをメタ認知し、必要であれば「アンラーン(学習棄却)」しなければなりません。
アンラーンのプロセスでは、必ず「恐れ」が現れます。「今までのやり方を捨てて大丈夫だろうか?」という不安です。しかし、感情をコントロールし、評価判断を一度保留にすることで、私たちは新しい自分へとアップデートできます。「認知の4点セット」で自分の感情をメタ認知することは、この「恐れ」を乗り越えるための最強の武器になるのです。
4.結びに:自律的に変容し続ける「経験学習OS」を実装するために
あなたの今日のリフレクション、次の4つにチェックがつきますか?
1)ゴールへの距離:目的地に近づくための「未達」を言語化しているか?
2)未来へのベクトル:過去の責任追及ではなく、明日を創るためのエネルギーを得ているか?
3)OS of 更新:自分の「思考の前提(ダブルループ)」を疑っているか?
4)知恵のマイクロ化:一見関係なさそうな場面でも、無理やり工夫して活かそうとしているか?
アインシュタインはかつてこう言いました。
「我々の直面する重要な問題は、それを作った時と同じ考えのレベルで解決することはできない」
これまでのOSの延長線上に、新しい未来はありません。
・実践的な内省スキルを習得する「ワークショップ」
・日々の気づきを学びに変える「AIコーチング」
「振り返りを形骸化させたくない」「自律的な成長を促したい」とお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
あなたの組織に、過去の反省ではなく、未来を創り続けるOSを。